1.「全国条例データベース」の発信

 鹿児島大学法文学部法政策学科では、1999年より、下井康史助教授(当時)を中心とする有志で、全国で初めて
インターネット上で条例や規則を閲覧することを可能にする「全国条例データベース」を発信するプロジェクトを
開始しました。このデータベースは、当時はまだオンラインでの参照・検索が不可能だった条例を手作業で収集して、
入力・分類し、分野・地域別に閲覧することを可能にしたものでした。条例はもちろん法令がインターネットにほとんど
公開されていなかった当時、インターネット社会草創期の法令情報発信の取組の嚆矢として高く評価されてきました。

2.条例データベースの発展と「全国条例データベース」の配信停止

 「全国条例データベース」の公開の後、多くの自治体が例規データベース(例規集)をネット上に公開するように
なりました。この間に、法律系データベース会社はそれぞれに機能を備えたデータベースを開発し、自治体から受注を
受けていました。また、これらの例規データベースへのリンク集サイト(たとえば「洋々亭」など)が登場し、
そこを経由して各自治体の例規集サイトにアクセスすることで、相当数の自治体の例規情報へのアクセスが比較的容易に
なりました。しかし、例規集内の条例や規則はgoogleをはじめとする検索システムにかかりにくく、複数自治体間の
横断検索ができないことや、公開されている例規集のほとんどはフリーワードでの検索システムが付属せず、
一般ユーザーにとって使い易いものではありませんでした。
 そのなかで、2013年に名古屋大学法学研究科附属法情報研究センターが、
法制執務環境の電子化(eLen=e-Legislation Environment)の研究(eLenプロジェクト)の一環として、
全国の自治体の例規を集めて、横断検索機能や立法作業を支援する機能を備えさせたデータベース「eLen」を開発し、
全国の自治体の法令執務担当部門と議会事務局に対する配信を開始しました。また、同志社大学による「条例Web」の
取組なども行われ、2017年7月には、ほとんどといえる自治体の例規をインターネット上で容易に閲覧できるように
なりました。
 こうした時代の進展の中で、「全国条例データベース」は、収録している例規情報について、平成の大合併による
自治体編成の変容に対応することが困難だったことやコンテンツが例規集へのリンク集に近くなってきたことなどを
踏まえ、自らの役割を終えてよいと判断し、2013年に更新を停止しました。

3.「全国条例データベースpowered by eLen」の発信

 鹿児島大学の法文学部法政策学科や司法政策研究科(法科大学院)においては、「全国条例データベース」の
取り組みだけではなく、遠隔講義システムの導入を始め、ICTを活用した教育環境の革新に取り組むなど、
インターネット環境を活用した様々な研究に取り組んできました。
 こうした経緯のなかで、鹿児島大学司法政策教育研究センターでは、2016年に
名古屋大学法学研究科法情報研究センターよりeLenを内蔵するサーバーの提供を受け、eLenプロジェクトに取り組んでいた
角田篤泰氏を特任教授として招聘して、法制執務環境の電子化に焦点を当てた研究を継承しました。
 その上で、政府の法令情報がe-LAWSというプロジェクトのもとで用いられるxml書式に統一されることと合わせ、
eLenの機能を引き継ぎ、例規情報を政府のe-LAWS規格に統一した書式で記述することとし、2017年5月末時点に収集した
例規データを内蔵したデータベースを、このたび「全国条例データベース powered by eLen」として公開することに
したものです。